第6回:株式会社電通アベニューA レイザーフィッシュ 天野氏|Webマーケティング対談

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マーケティングの中心はデータ主義に移行しつつある。ネットはマスではなく、Web解析の手法を使ってユーザー個人に対するマーケティングを行うことによって、ロイヤリティー向上と効果効率の追求が可能になります。

Webマーケティング対談の第6回目のゲストは、総合インタラクティブマーケティングをサポートする企業、株式会社電通アベニューA レイザーフィッシュのアナリスト、天野洸様にご登場いただきます。
顧客視点に基づく分析とソリューションのアナリストとしてご活躍されている天野さんに、カスタマーインサイトや現在注目をされているWebマーケティングについてお話していただきました。

アメリカ発の最新web分析手法を生かしながら日本のクライアントに対してサービスを提供

石川
天野さんの部門であるカスタマーインサイト部は、Web広告の分析・改善サービスを主軸にご提供されていらっしゃいますが、その中でも現在一番力をいれていらっしゃるサービスメニューや業種を教えていただけますか?
天野
4月からカスタマーインサイト部はグローバルマーケティング本部の一部として部署の名前を変え引き続き活動を続けています。弊社組織内の位置づけは変わりましたが、引き続きアメリカのAvenue A | Razorfishのカスタマーインサイト部との連携を密に保ち、アメリカ発の最新Web分析手法を生かしながら日本のクライアントに対してサービスを提供しています。弊社のグローバルマーケティング本部ではアドバンスド・オプティマイゼーション(以下AO)という科学的なアプローチを使い入力フォームの最適化行い、コンバージョン率のアップを実現するサービスを提供しています。
石川
貴社のサービスについて、もう少し詳しくお聞かせください。
天野
AOを導入することで、特定の業種に限ることなく様々な業種でサイト内の売り上げや顧客獲得に繋がるコンバージョン率のアップが可能になりました。またAtlasというWeb解析、広告配信エンジンを使い、広告の内容や出稿のタイミング、出稿先のデータを集め体系的に分析、検証することでコンバージョン率をアップさせる広告の最適化もサービスとして提供しています。弊社ではまた別の取り組みとしてWeb解析のベンダー企業が情報交換をしたりネットワークすることのできるイベントや勉強会の開催も予定しています。こういった活動を通じて、まだまだ認知度の低いWeb解析サービスを業界内の企業同士で協力しながら一般企業にご紹介できる機会を作って行ければと考えています。

Webマーケティングは「嘘がつけない世界」

石川
天野さんが考えられるWebマーケティングという枠の中の解析サービスの役割とはズバリ何でしょうか?
天野
一言でいうと「嘘がつけない世界になった」になるでしょうか。この嘘がつけなくなった相手は2ついると考えていて、1つは広告主であるクライアント、もう1つは消費者です。
まずクライアントに対してですが、これまでテレビの視聴率や雑誌の購読数など「どんぶり勘定」でやってきたプロモーションの効果測定がWeb解析を使うことで、訪問数やリピートなどを含めたユーザー数の把握から各ユーザーがどういった流入経路でどのようにサイト内を回遊し、どこで脱落しているかまで全て把握できるようになってしまった訳です。こういった詳細な集計データを使って広告主であるクライアントに現状の報告やそれに基づいた課題の発見、そして具体的な解決策の提案を行うことが我々マーケティング担当へクライアント側から要求されるようになってくるはずです。
また消費者に対しては、これまでマスメディアを使って消費者全体にリーチし、何らかのインパクトを植え付ければいい、という既存のクリエーティブ概念が変わって来たことを指します。ネットでは漠然としたマスに対してではなく、Web解析の手法を使ってユーザー個人に対するマーケティングが行えます。これは各個人の趣味や嗜好を考慮した広告を出し、それぞれの興味関心を刺激できることを意味します。またそうすることで、「自分を見てくれている」というユーザーの満足度がマス広告の場合より向上し、最終的にユーザーのロイヤリティーをあげる可能性も秘めています。
誰を相手に、何をどう伝えるのか。その精緻さ次第でWebマーケティングの効果効率は大きく変わります。

注目しているのは広告最適化に関する手法とネット広告市場の寡占化

石川
天野さんが最近注目しているWebマーケティング手法、業界動向等を教えてください
天野
日本ではまだまだ少ないのですが広告の最適化に関する手法は注目しています。まだ日本ではネット上での広告が各ユーザーにどの様に届いてそれが最終的にコンバージョンにどの様に繋がっているかを検証している事例をあまり聞いていません。しかしアメリカでは既にかなり広範囲でこういったことが行われているようです。市場環境や消費者特性など違いはありますが、国境や電波の到達範囲に縛られないWebコミュニケーションやムーブメントは、そういった違いを超えてリーチし波及していく力を持っています。それに対するアプローチもまた然りです。弊社ではAtlasを使い、アメリカで見られるような広告最適化の日本における先鞭をつけていきます。
石川
業界の動向についてはいかがでしょうか?
天野
業界動向に関してですが、気になるのはやはりネット広告市場の寡占化です。アメリカではGoogleによるDouble Clickの買収が承認されたばかりですし、Microsoftの買収から身をかわそうとするYahoo!がGoogleのAdSenseを導入することを発表したり、AOLとの提携を匂わせてみたりなどしていた後買収案件は消えてしまいましたが、市場におけるプレイヤーの数は確実に減少傾向にあります。弊社のアメリカの合弁先であるアベニューAレイザーフィッシュのホールディング会社のaQuantiveも昨年Microsoftに買収されました。(注:買収が発表されたのは昨年5月、買収が完了したのは8月です)寡占化の善し悪しについては自分がどの立場にいるかどうかで変わってくるのであまりここではつっこみませんが、やはり驚くのはネット広告市場の変化のスピードです。ネットでのビジネスは他業種に比べ物理的に制約が無い分、コスト削減の施策を一番最初に効果的に行えた企業だけが一気にマーケットを席巻して、その他の負け組を吸収していく動きが急速に進んでしまっています。つい10年ちょっと前にはネット業界というのが全く存在しなかったことを考えるとこれは驚くべきスピードです。こういった勝者が全部もっていってしまうという動きはこれから日本でもっと見られていくのではないでしょうか??

マーケティングの中心はデータ主義に移行しつつある

石川
天野さんが考えられる、これだけは押さえなくてはならないWebマーケティングの基本とは何ですか?
天野
やはりマーケティングの中心はデータ主義に移行しつつあると言うことです。先ほども言いましたがサイトに関する各ユーザーのデータを集めて詳細に分析する手法を導入して初めてこれからのネットでのマーケティングが成立するということです。細かいデータなしの従来のマスディアで確立されたマーケティング手法はこれからは廃れていく一方でしょうね。こういった話は広告主であるクライアントに対して話すことが多いですね、というのも消費者に比べてクライアント企業の中ではこのマーケティングのパラダイムが変わったという意識はまだまだ低いと思います。それに比べて消費者が買い物をする行動パターンはネットが出てきたことで随分変わりました。価格.comで商品情報や、価格、口コミ情報までチェックした後に量販店に行くという購買行動の流れはネット以前には当然ありませんでしたが、今は消費者のほとんどが当然の様にそれをしていますよね。ということもあり、消費者はネットが出て来てから購入の行動パターンを全く違ったものにしてしまいましたが、それに比べて企業のマーケティングの手法はそんなに変わってきていない様に感じます。この企業の旧態依然としたマーケティングに対する態度は代理店にプロモーション一連を丸投げしてきた企業のこれまでのプロモーションのやり方によるところが大きいと思いますが、データ中心のプロモーションの重要性に気づき積極的に導入していく企業だけがこれから勝ち残っていくと思います。
石川
まさにおっしゃる通りだと思います。消費者の方がネットの活用については一歩も二歩も先にいっていますよね。
天野
考えてみれば、企業のマーケティング担当者も仕事を離れれば価格.comをチェックして量販店に足を運ぶ消費者の1人なんです。当たり前の話ですが、その視点はとても大切だと思います。こういった各企業への啓蒙というか新しいマーケティング手法の紹介そして実施というのも、弊社、プレッシャーポイントさん含め、我々Web解析屋のの重要なタスクの一つだと考えております。
石川
当社もアクセス解析の精度を更に向上し、そのマーケティング概念や効果について、もっともっと広めていかなくてはならない使命を日々感じております。天野さん、本日は貴重なお話を有難うございました!

対談日:2008年6月5日

(文中敬称略)

今回の対談にご協力いただいた企業様

株式会社電通アベニューA レイザーフィッシュ
  • 住所:〒 104-0045  東京都中央区築地5-6-10 浜離宮パークサイドプレイス14F
  • TEL:03-5551-9885
  • FAX:03-5551-9978
  • URL:http://www.dentsu-aarf.com/ja/
アナリスト 天野洸(あまの・たけし)氏 プロフィール
天野氏近影
  • 最近のマイブーム:  以前ばりばりやっていたヨガを再開。最近は近くのホットヨガのクラスに通っています。自転車で都内を走り廻ることもよくやります。
  • 休日の過ごし方:  最近は近所にすんでいる庭の広い家を持った友達の家に最近生まれた赤ちゃんを見に行くことが多いです。長く休みがとれればバリに行きます。
  • 生まれ変われるなら誰、もしくは何になりたいですか?:鳥になりたいな。
  • 座右の銘: There are two ways to live your life. One is as though nothing is a miracle. The other is as though everything is a miracle ― Albert Einstein
    人生を生きるには2とおりの方法がある。ひとつは、なにひとつミラクルなんてないと思って生きること。そしてもう一つは、すべてがミラクルだと思って生きること ― アルバート アインシュタイン

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